Story | TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト

とある大陸の、とある時代。

大陸を南北に分断した大戦は終結し、世の中は平和へ向かう気運に満ちていた。

戦時中、軍人として戦ったヴァイオレット・エヴァーガーデンは、軍を離れ大きな港町へ来ていた。
戦場で大切な人から別れ際に告げられた「ある言葉」を胸に抱えたまま――。

街は人々の活気にあふれ、ガス灯が並ぶ街路にはトラムが行き交っている。
ヴァイオレットは、この街で「手紙を代筆する仕事」に出会う。
それは、依頼人の想いを汲み取って言葉にする仕事。

彼女は依頼人とまっすぐに向き合い、相手の心の奥底にある素直な気持ちにふれる。
そして、ヴァイオレットは手紙を書くたびに、あの日告げられた言葉の意味に近づいていく。

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:石立太一 
    演出:石立太一、藤田春香、澤 真平
  • 作画監督:丸木宣明、高瀬亜貴子、明見裕子、丸子達就

感情を持たない一人の少女がいた。
少女は戦うための「道具」として生きていた。
名はヴァイオレット。

時は流れ戦争は終わり、新たな時代が始まろうとしていた。

戦地で傷ついたヴァイオレットはベッドの上で目を覚ます。
白くなめらかな両腕は、砲弾を受け銀色に輝く義手に替わっていた。
彼女に残されたものは、戦場の記憶と上官〈ギルベルト・ブーゲンビリア少佐〉が
最後に告げた言葉だけ。
だが、その言葉の意味をヴァイオレットは理解できずにいた。

そこへ、一人の男が現れる。元陸軍中佐のクラウディア・ホッジンズ。
ホッジンズはギルベルトに代わって彼女を迎えに来たと言う。
二人が向かうのは南部の港町・ライデンシャフトリヒの首都、ライデン。
活気あふれる人々、美しい港の風景、ライデンの街はヴァイオレットを迎え入れる。

新しい街でヴァイオレットは「自動手記人形」に出会う。
それは、依頼主の気持ちを言葉に代えて手紙に綴る仕事。
時には依頼主が胸のうちに秘めた想いさえもすくい取る。

ギルベルトがヴァイオレットに残した言葉―――「愛してる」
「自動手記人形」になればその意味がわかるかも知れない。

――「愛してる」が知りたいのです。――

それは、感情を持たず戦うための「道具」として生きてきたヴァイオレットが、
初めて示した意志だった。

1話のコンテ、演出を担当しました石立と申します。第1話ということで、随分悩んだことを覚えております。エピソードとして何を持ってくるべきか、キャラクターデザイン、背景、色彩設計、撮影処理。ここから始まる全てのエピソードの起点として、どう在るのがもっとも相応しいか。悩みました。
結果、ヴァイオレットという少女の魅力「愚かしいほどの実直さ、透明ではなく白」これを表現するならば、変に奇を衒わずに、そのまま、ありのままのヴァイオレットを素直に描く事が大切だと思いました。それは、彼女の存在そのものが美しいと、原作を読んで感じたからです。
その為に、この世界なりの「そのまま、ありのまま」をなるだけ素直に描き。そこに「真っ白な違和感」を存在させる。「彼女の見た世界」ではなく「世界を見た彼女」を描く。その客観的視点こそがこの作品に相応しいのではないかと。

彼女の成長とともに視点も変化していくかもしれません。ですがそれも含めて見ていただいた方に、「良かった」と言っていただける作品を目指して制作しました。最終話までお付き合いいただけたら幸いです。

素敵な作品に出演する事が出来感謝しています。
人の想いの優しさに触れて心が温かくなるのを感じる事が出来る、とても美しい作品ですのでどうか最後まで見守ってやって下さい。

1話いかがでしたか?『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ならではの世界観が提示されていたと思います。
そして、まだまだ物語に謎が残されているので、ヴァイオレットにこれまで何があったのか気になった方が多いかもしれません。
演じるベネディクト・ブルーについては、アフレコの最初に石立監督から説明を受けて、そこで初めて彼がヒールの付いた靴を履いていることに気づいて驚きました。
何やら彼独特の美意識があるみたいです。
また、これからのお話でベネディクトと一緒に働いている郵便社の他のメンバーも登場するので、ヴァイオレットのこれからと共に、そちらにも注目していただけたら幸いです。

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:藤田春香 
    演出:藤田春香 
    作画監督:植野千世子

エリカ・ブラウンには夢があった。
夢中で読んだ小説のように、人の心を動かす言葉で手紙を書くこと。
だけど、現実は……

C.H郵便社に新人の「自動手記人形」〈ドール〉が加わった。
人形のように無表情な少女―――ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
彼女が人の思いを手紙にする「自動手記人形」の仕事に向いているとは誰も、
もちろんエリカにも、思えなかった。

相手の言葉をそのまま受け取り、思ったこと、感じたことを率直に表現するヴァイオレットには、
依頼人の「本当の気持ち」がわからない。
そのため依頼人はヴァイオレットの代筆した手紙に怒り、C.H郵便社には苦情が届く。

それを隣で見ていたエリカは、どうして彼女がこの仕事を選んだのか不思議でならない。
ドールに向いていないのに、
必要とされていないのに、
――それは、自分も同じ。

エリカはヴァイオレットに尋ねる。
「どうして、この仕事がいいのよ?」
ヴァイオレットは、まっすぐにエリカを見て答える。
「たとえ向いていなくても、私はこの仕事を続けたいのです」

ヴァイオレットの強い眼差しは、雲間から差し込んだ光のように、
エリカに見失っていた夢を思い出させた。

今は依頼人の「本当の気持ち」がわからなくても、これから一人ひとりの心と向き合えば、
ヴァイオレットにもきっと人の心に響く手紙が書けるはず。
そして、自分もいつか――。

代筆室内にいるキャラクターの影のつけ方、色味にこだわりました。
窓に近いキャラは窓光源でコントラストも強く、窓から遠いキャラはノーマルな影付けに。全体的に色を落としています。
立ち位置で色味が違うキャラクターが同じ画面内に映る際に従来より自然な空間を表せれたんじゃないかなぁと思います。

感情を知るって、こんなにも純粋なんだと、ヴァイオレットを通して感じました。
ガラスの入れ物の様な彼女に、綺麗な石をたくさん詰めたい、早くヴァイオレットの笑顔が見たい、出会う人全てが幸せになってほしいと、回を重ねる毎に思います。
一つ一つの出会いと経験が、ヴァイオレット同様、私の宝物になりました。ぜひ一話から見届けていただきたいです。

エリカ・ブラウン役の茅原実里です。待ちに待った放送がスタートして毎週ワクワクしています!
私が演じているエリカは、C.H郵便社で自動手記人形として働いているショートボブの可愛いメガネっ娘。
内気な性格で、いつもどこか自分に自信がなさそうな独特な雰囲気を持っていて、自分と同じ匂いを感じるところもあったりする女の子です…(笑)
第二話では、ヴァイオレットに出逢ったことで、エリカの中で閉じていた扉が開いて、一歩前に踏み出せたような素敵なお話でした。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、戦うことしか知らなかった純粋無垢なヴァイオレットを通して、人間の奥深さや素晴らしさをあらためて考えさせられる物語です。ぜひ、来週の放送もお楽しみに~!

  • 脚本:浦畑達彦 
    絵コンテ:北之原孝將 
    演出:北之原孝將 
    作画監督:明見裕子

良きドール〈自動手記人形〉は、相手が話している言葉から
伝えたい本当の心をすくい上げて「手紙」にする。
それは、自動手記人形にとって何よりも大切なこと。そして、何よりも難しいこと。

自動手記人形の養成学校に通うルクリア・モールバラは、そこで軍人のように振る舞う
一風変わった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンと出会った。

銀色に輝く義手で打つヴァイオレットのタイピングは、速く、正確。
そして、学科の成績も優秀だった。
だが、彼女が代筆したルクリアの両親へ宛てたものは「手紙」と呼べるものではなかった。

ヴァイオレットには、わからない。
大切な人の『愛してる』も、自分の気持ちさえも。

「…心を伝えるって、難しいね」
そう呟いたルクリアにも、本当に気持ちを伝えたい人がいた。
それは戦争の帰還後に変わり果ててしまった兄のスペンサー・モールバラ。
元軍人のスペンサーは両親を敵国の攻撃から守れなかったことを悔やみ続けている。

ルクリアがずっと伝えられずにいた、残されたたった一人の家族への本当の想い。
―――「生きていてくれるだけで嬉しいの…」

ヴァイオレットはルクリアの想いを綴り、スペンサーに届ける。
それは、任務でも課題でもない。彼女が代筆した、短いけれど心のこもった「手紙」だった。

ドールにとって一番大切なことを知ったヴァイオレットは、
自動手記人形としての一歩を歩みだした。

3話、絵コンテ、演出を担当しました北之原です。
製作中は、ルクリアの気持ちの大きさを形に出来るよう考慮して進めました。何故伝えようとしたのかより、何を伝えようとしたのかが、重要だと感じたからです。
ヴァイオレットは、まだ、人の気持ちを受け取り、人の為に手紙にしていく事の意味を、理解する途中なのかもしれません。でも、出会う人を通じて、自分のこれからをみつめなおすきっかけになったと思います。

第3話は言葉の持つ力を感じるお話でした。
ローダンセ教官の「心」の発音がとても美しくて、「心」という言葉の持つあたたかさと深さに初めてちゃんと触れたような気がします。
演じさせていただいたルクリアちゃんは「自責の念がとても根深い女の子だ」と石立監督から説明を受け、健気で不器用な兄妹に何度も泣かされそうになりながらの収録でした。
この作品にこうして関わらせていただけて、すごくすごく幸せです。
これからもぜひ最後までヴァイオレットちゃんを見守っていてあげて下さい!どうか幸せになって…!

このような心情に訴える繊細なアニメーションに関わらせていただけることは、役者としてとても光栄なことだなと思っております。
過去からの影響で様々複雑な心境をもつスペンサーを演じるにあたっても、その繊細さを大切にしました。
見てくださる皆さまに少しでも何か残れば。これは素晴らしい作品です。

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:武本康弘 
    演出:澤 真平 
    作画監督:角田有希

長かった髪をばっさりと切り捨て、ハイヒールを履いて、お気に入りの衣装をまとえば、
気分はライデン一番の自動手記人形。
新人ドールのアイリス・カナリーは、働く女性に憧れていた。

アイリスに見知らぬ人物から初めての指名が入る。
都会を離れたのどかな土地カザリへ向かうアイリスとヴァイオレット。
そこで待っていたのはアイリスの両親だった。
心配性の両親は都会で働く一人娘に会いたくて、偽名で依頼を出したのだ。

両親はアイリスのために誕生日パーティを開き、花婿候補を集める。
その中には、アイリスがかつて想いを寄せていた彼の姿も。
ショックを受けたアイリスは、途中でパーティを飛び出してしまう。

慣れないハイヒールを履いて背伸びをした理由。
生まれ育った故郷を離れた理由。
それは、実らなかった恋を忘れるため……
アイリスが告げた『愛してる』は、長年恋い焦がれた彼の心には届かなかった。

『愛してる』という言葉の重さを知るヴァイオレット。
『愛してる』はとても勇気のいる言葉。少佐もあの時―――……

心の整理がついたアイリスは、ヴァイオレットに代筆を依頼する。
自分が台無しにしてしまったパーティの招待客へ、お詫びの手紙を出したいと。
すると、それならば両親にも手紙を書いてはどうか、と言い添えるヴァイオレット。

「手紙だと届けられるのです。素直に言えない心のうちも、届けられるのです」

不器用な娘から両親へ宛てた手紙には、面と向かっては言えないけれど、
本当に伝えたい気持ちがつづられていた。

人の気持ちは繊細で複雑。時には相手を想うからこそ吐く嘘もある。
手紙だからこそ届けられる気持ちもある。

ヴァイオレットは少しずつ人の気持ちを理解し始めていた。

アイリスのルーツを辿るお話です。「なりたい自分になる」ためにがんばる女の子、いいですよね。見栄を張ったり、背伸びをしたりする姿も、なんだかとても微笑ましいです。応援したくなってしまいます。
それはそうと、コンパートメント車、いいですよね。寝台車の旅、いいですよね。一度でいいから自分もしてみたいです。ヴァイオレットとアイリスがうらやましい!

1話1話が本当にどれも素敵なお話で後半に話が進んでいくほど涙なしで見ることができないくらい色々な事を考えさせられます。
アフレコ中もいち視聴者になって号泣しながらアフレコに参加させていただいた事も何度かあります(笑)
この作品に関わることができた事を本当に嬉しく思います。
アイリスのお当番回もありますし、毎週どんな展開になっていくのか是非楽しみにしていてください!

  • 脚本:鈴木貴昭 
    絵コンテ:山田尚子 
    演出:藤田春香、澤 真平 
    作画監督:植野千世子

季節は移り、空が高くなる頃。
ヴァイオレットは数々の手紙を代筆し、貴族の間で話題の自動手記人形になっていた。

今回、ヴァイオレットが代筆するのは隣国へ嫁ぐ王女の恋文。
ドロッセル王国の王女とフリューゲル王国の王子が交わす恋文を国民に公開することで、
国を挙げて二人の結婚を祝う。
これは王国の伝統的な儀式であり、戦時中に敵対関係であった両国の和平を結ぶ「婚姻外交」
でもあった。

ドロッセル王国の王女・シャルロッテは、14歳のあどけない少女。
異国へ嫁ぐことも、侍女のアルベルタと離れることも、不安でたまらない。
王女の恋文を代筆するのは、彼女と同じ年頃の自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
ヴァイオレットは古今東西の書物から得た恋愛の知識で、見事な恋文をしたためる。
しかし、シャルロッテの表情は晴れない……。

数年前。白椿の花壇でのこと。
一人で泣いていたシャルロッテに、フリューゲル王国の王子・ダミアンが声をかけた。
飾らない笑顔、ありのままの言葉でなぐさめてくれたダミアン。
その時、シャルロッテは王子に恋をした。
それなのに……。
王子から届く自動手記人形が代筆した恋文は、シャルロッテを不安にさせる。
美麗に飾られた恋文に、王子の心が見えない。

王子と王女の恋文に国民がどれほど沸き立とうとも、国内が平和の気運に包まれようとも、
シャルロッテの涙は止まらない。

同じ年頃の少女の恋心に触れたヴァイオレット。
「あなたの涙を止めて差し上げたい」
そう告げて、ある行動に出る。
それは、シャルロッテとダミアンに自らの手で恋文を書かせること。
ありのままの言葉、ありのままの筆致で綴られた恋文は、二人の心を近づける。

そして、ダミアン王子から届いた最後の手紙には一言。
「今宵、月下の庭園で待つ」
その夜、二人は初めて出会った白椿の花壇で永遠の愛を誓った。

結婚式の朝。
姫は、生まれる前から時間をともにした侍女・アルベルタに心からの感謝と別れを告げる。
シャルロッテの瞳に涙はなかった。

同じ頃、ヴァイオレットの瞳にも清々しい秋の空が映っていた。

5話のコンテを担当しました山田です。
名前を呼ぶことを大切にしました。
宮廷女官のアルベルタがシャルロッテに話しかけるとき、その時々の想いに寄り添った呼びかけであるよう、少しずつ積み上げていきたいとおもい大切に大切にコンテを切りました。
姫。姫さま。シャルロッテ姫。シャルロッテ。
そのひとつひとつがアルベルタのかけがえのない愛の形としてシャルロッテに届きますよう。
そして、ヴァイオレットの愛の気づきにつながるひとつのかけらになりますよう。
想うことのかけがえのないあたたかさを教えていただけたお話しでした。

「あなたの涙を、止めて差し上げたい」そう伝えてくれたヴァイオレットの声と眼差しが、
とても美しく印象的な回でした。
私が演じさせていただいたシャルロッテは、姫という立場と乙女心のあいだに揺れながらも、思いのままに(時には激しく)感情を表す子です。
そんな彼女と出会い共に過ごした時間が、ヴァイオレットにとっても心に残るものだったならいいな…と願ってやみません。
こんなにも素晴らしい作品に携わることができて本当に幸せです!
ありがとうございました。

愛しくて、可愛くて、心もとないシャルロッテ。
幸せを願いながらも一抹の寂しさを胸に彼女を送り出すアルベルタ。
そんな心がほわ~っと暖かくなるものを感じて頂けたら嬉しいです。
もし私に娘がいたらきっと同じ想いで見送るんでしょうね。
スタジオの中にもとっても柔らかな空気(愛)が溢れていましたよ。。
それにしても”手紙“って素敵。
会話では伝えきれない心のキャッチボールが出来るもの。
すごい力を持ってますよね。しばらく書いてないな~。

  • 脚本:浦畑達彦 
    絵コンテ:三好一郎 
    演出:三好一郎 
    作画監督:角田有希

200年に一度の彗星にまみえるように、人と人の出会いも思いがけず訪れ、瞬く間に過ぎていく。
たった一度の出会いが人生を変えてしまうこともある。

ユースティティアの山間部に建つ、シャヘル天文台。
写本課で働く少年、リオン・ステファノティスは人生のほとんどの時間をここで過ごしている。
まだ、恋は知らない。

天文台の大図書館には、悠久の時を経た書物が数多く眠っている。
日々劣化する古書を記録し後世に残す写本課は、仕事の補佐として大陸中から自動手記人形を
集めた。

タイプライターを片手に国を渡り歩く自動手記人形たち。
リオンは彼女たちを母と重ねて嫌厭していた。
家を出たまま戻らない文献収集家の父を探すため、幼い自分を置いて旅立った母。
リオンは母が自分よりも愛する男を選んだのだと思い、女にも恋にもコンプレックスを抱くように
なった。

だが、リオンは出会ってしまう。
今まで出会ったこともないような美しい少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンに―――
その瞬間、リオンの鼓動は今までにない音を鳴らし始めた。

リオンは幼い頃に親と別れ、この天文台へと預けられた。
ヴァイオレットもまた孤児で、親の顔も知らずに育ったという。
自分と似ているヴァイオレットを、ますます知りたいと思うリオン。

200年に一度訪れる、アリー彗星の夜。
リオンはヴァイオレットを天体観測に誘い、自分のことを話し始める。
母親に置いていかれてから、ずっとここに籠もり続けていること。
残された者の寂しさ。それでも、母親を大切に思っている気持ち。

それは、ヴァイオレットが自分でも気づいていなかったギルベルトへの感情と重なる。
「私は、あの方と離れて『寂しい』と感じていた」
ギルベルトを思うヴァイオレットの横顔を見て、リオンはヴァイオレットにとって彼が特別な存在
なのだと知る。

彗星の夜が明け、ヴァイオレットが天文台を発つ日。
リオンは長年籠もり続けていた天文台を出て、尊敬していた父と同じ文献収集家として歩み出そうと決意する。
自分の足で大陸中を旅して、まだ知らない多くのことを学ぼうと。

ヴァイオレットが生きている世界と、同じ空の下で。

大人と子どもの間にいるリオンの、繊細な心の機微を一つ一つ丁寧に拾い上げられるよう気を配りました。ヴァイオレットとリオンは、自分にとって重要な一点のみを見つめて生きていて、周囲から差し伸べられた手に気づかない、そんなところが似ているかなと思います。
そんな二人が出会い、お互いに心を少しずつ溶かしていく姿を親(または友人)のような気持ちで見守っていただければ幸いです。

「愛」という大きくてあたたかい人の想いを感じさせてくれる、素敵なお話でした。
リオンは大人になろうと背伸びしているけど、まだあどけなさの残る男の子です。
ヴァイオレットへの甘酸っぱい複雑な感情をどう表現しようか考えましたが、石川由依さんの凛としたお芝居が心地よく、すうっと引き込まれるように、リオンを楽しく演じることができました。
とても贅沢な時間を過ごすことができて、『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』に関われて幸せだなと改めて感じました。
2人のこれからの成長を期待しつつ……最後まで、この作品を見守っていただけたら幸いです。ありがとうございました!

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:山村卓也 
    演出:山村卓也 
    作画監督:門脇未来、植野千世子、角田有希

『いつか、きっと見せてあげるね、お父さん』
そう言った娘は、もうここにはいない。

湖畔にぽつりと立つ屋敷に、人気戯曲家のオスカー・ウェブスターは暮らしていた。
オスカーは戯曲の執筆を手伝ってくれる自動手記人形を呼び寄せる。
現れたのは、オスカーが名前すら悲しくて囁けない「あの子」と同じ髪色の少女、
ヴァイオレット・エヴァーガーデンだった。

ヴァイオレットがやって来ても、オスカーは何かを紛らわすように酒を飲み続け、
仕事に向かおうとしない。
それには理由があった。

オスカーには自分の命よりも大切な娘がいた。
お気に入りの日傘を差して湖畔を歩く「あの子」の名前はオリビア。
『わたしもこの湖を渡ってみたい。あの落ち葉の上なら、歩けるかなぁ』
そう言って、オスカーに微笑む。
だが、幼い彼女は病に冒され天国へと旅立った。
ただ一人、オスカーを残して。

大切な人との別れがどれほどつらいことか。
ヴァイオレットはオスカーの深い悲しみに共感する。

オスカーはオリビアに生前聞かせてやった物語を、
子ども向けの戯曲として完成させようとしていた。
物語の終盤、主人公は日傘を使って湖を渡り、父の待つ家に帰らなくてはならない。
その情景が浮かばず、行き詰まるオスカー。

次の瞬間、オスカーの瞳にオリビアの日傘を持って湖に向かって跳躍するヴァイオレットが映る。
ブーツが水面の落ち葉に触れて、風の力でふわりと一瞬浮き上がる。

その姿に亡くなったオリビアを重ねるオスカー。
「死なないで、ほしかったなぁ…」
オスカーにはオリビアが微笑みかけたように見えた。

「君は死んだ娘の『いつかきっと』を叶えてくれた。
ありがとう。ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
優しさに満ちた瞳で告げるオスカー。

だが、ヴァイオレットの瞳の奥には悲しみが宿っていた――。

ヴァイオレット7話のコンテ、演出をさせていただきました山村卓也です。
今回のお話は自動手記人形という職業を通して色んな人たちに出会い、代筆を行ってきたヴァイオレットにとってある種の転換期に入る話といってもよいのかもしれません。
幼少期から『普通』に過ごしてこなかったが色んな事を学び、知り、感じ『愛している』という意味を探してきたヴァイオレット。
愛を失い愛を形にしようとする男性オスカー・ウェブスターとの出会いによりヴァイオレットとオスカーがお互いどういう影響をあたえ各々がどう自分を見つめなおすかそこの意識を大切に描こうとこだわりました。
オスカーの服装の変化なども含めてみていただけると嬉しいです。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のオスカー役をやるにあたっては、台本を読んだ時点で、とにかく泣けました。
数多くの作品がある中でもこんな感覚は久し振りでした。
各話数そうだと思いますが、実に名作だと思います。

この作品自体が持つ力と、ヴァイオレットをはじめとした数多くのキャラクターが作る世界観を大事にしたい一心で演じようと思いました!
ある出来事をきっかけに心を閉ざしてしまったオスカーが、ヴァイオレットと出逢う事で、果たしてどうなっていくのか、そしてヴァイオレットもオスカーとの出逢いによって、果たして成長があるのか?
そこに注目して、とにかくドラマに浸って貰えればと思います。

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:澤 真平 
    演出:澤 真平 
    作画監督:岡村公平

自分が誰かの「いつかきっと」を奪っていたことに気づいたヴァイオレットは、
いつの間にかその身が燃え上がっていたことに気づく。

――4年前。

北東戦域で拾われた「武器」と呼ばれた孤児の少女は、ギルベルトと出会った。
言葉も話せない少女は、虚ろな瞳でギルベルトを見つめる。
ギルベルトは少女を引き取り、上官の命で彼女を自分の部隊に入れることになった。

ギルベルトは少女を「ヴァイオレット」と名付けた。
その名が似合う女性になるようにと願いを込めて。
ヴァイオレットはギルベルトのもとで、言葉を覚え、文字も書けるようになった。

一方で、その呪われた才能とも言うべき並外れた戦闘能力で、次々と敵兵を倒していく。
一人、また一人。
ヴァイオレットが敵兵の返り血を浴びるほど、ギルベルトの部隊は功績を讃えられ、
ヴァイオレットの噂は「少佐の武器」として瞬く間に広まった。
そして、ギルベルトの心は締め付けられていった……。

それから、月日は流れ、ヴァイオレットの活躍により部隊は順調に作戦を成功させていった。

部隊は、敵国から解放されたばかりのメヒティッヒの町を訪れる。
そこでは、人々が日頃の感謝の気持ちを伝え合う祭りが行われていた。

夜店で売られていたエメラルドのブローチの前で、釘付けになるヴァイオレット。
「少佐の瞳があります」
何と言い表せばよいのか分からないほどの衝撃がヴァイオレットの体を駆け抜ける。
それが「美しい」だと知ったヴァイオレットは、
「言葉がわからなかったので言ったことはありませんが、
少佐の瞳は出会った時から『美しい』です」と伝えた。
その言葉を聞いたギルベルトは、例えようもない苦しみに胸をつまらせた。

南北大戦の決戦の地となる、聖地インテンス。
この地を制圧すれば、戦争は終わりへと向かう。
ギルベルト部隊は内部への侵入に成功し、屋上から全軍突撃の合図を送った。

しかし、ギルベルトに敵の銃口が向けられていることに、誰も気づいていなかった―――

今まで語られてこなかった、ヴァイオレットがまだ戦場の兵士だったころのお話です。
まだ幼い狂犬のようなヴァイオレットと、彼女を突然預かることになった生真面目な軍人のギルベルト。本来相容れるはずのない二人が、いかに出会い、いかに大切な存在へと変化していくのか。
そんな二人の心の交流を、互いの視線に込めて演出させていただきました。
語り合う言葉は少なくとも、お互いの瞳は会話をしている、そんな関係性は素敵だなと思います。

こんなにも綺麗で繊細で儚い作品に参加することができ、とても光栄に思います。
ギルベルトとしてどれだけヴァイオレットに想いが伝えられるか、それを通して観てくれる皆様にどれほどの印象を残せるか。
今思えば収録はそんな戦いだったような気がします。
非常に難しくも面白い現場でした。

ギルベルトが皆様の心に何か残せたのなら、それだけで喜びの極みです。
どうぞ、よろしくお願いいたします!

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:武本康弘 
    演出:武本康弘 
    作画監督:丸子達就、岡村公平

インテンス奪還作戦中、ギルベルトは敵の銃弾を受け致命傷を負う。
動けなくなったギルベルトを連れて、逃げようとするヴァイオレット。
さらに敵の攻撃を受けヴァイオレットの両腕は、失われた。
ギルベルトが何度逃げろと告げようとも、ヴァイオレットはその場を離れようとしない。

ギルベルトはヴァイオレットに微笑みかける。
「生きて、自由になりなさい。心から……愛してる」
だが、ヴァイオレットは言葉の意味が理解できず、悲痛に訴える。
「私……わかりません、少佐。「あい」ってなんですか……?」

敗北を悟った敵軍は自らの総本部であるインテンスを砲撃。
崩壊する大聖堂の中に残された二人は、瓦礫の中へ消えていった―――。

ヴァイオレットはギルベルトが無事だと信じていた。
しかし、真実は違った。
瓦礫の中からギルベルトが見つかることはなく、未帰還兵として処理され墓が建てられていた。
ホッジンズは、瓦礫のインテンスに立ち尽くすヴァイオレットを連れて、C.H郵便社へと帰る。
覚悟を決めて真実を告げたホッジンズは、
ヴァイオレットが自らの力で過去を乗り越えるしかないと考えていた。

このまま自動手記人形でいてもいいのか、生きていていいのか。
それから、しばらくヴァイオレットは部屋に籠り続けた。

そこへローランドが手紙を届けにやって来る。
差出人はアイリスとエリカ。ヴァイオレットが初めてもらった手紙だった。
ヴァイオレットはローランドの仕事を手伝い、市内の家々に手紙を届ける。
配達をしながら、どの手紙にも誰かの大切な思いが詰まっていると感じる。

ヴァイオレットが多くの人の命を奪ったという事実は決して消えない。
だが、その手が手紙を書き、多くの人を救ってきたという事実も決して消えることはない。

ギルベルトがつけた「ヴァイオレット」という名。
その名にふさわしい人になるように、ヴァイオレットは再び歩き始めた。

9話のヴァイオレットは、とにかくボロボロです。服は汚れ、義手は壊れ、目元は赤く泣き腫らしています。でも一番ボロボロになってしまったのは、拠り所を失いそうになっている心でした。
そんなボロボロのヴァイオレットを繊細に丁寧に、外側から内側までをしっかりと描ききることが何よりも大切だと考えました。
彼女がこれまでドールとしてやってきたことや出会った人々、全てが心の中で繋がって、悲しみや葛藤を乗り越え前を向こうとするヴァイオレットを、皆さんにも応援して頂けると嬉しいです。

OP映像の中で叫んでいるヴァイオレットを初めて見た日から、いつかこうなる彼女を演じなければならないんだ…と、ずっと覚悟みたいなものを持ち続けて前話までを演じてきました。
8話・9話を演じている最中は、ヴァイオレットの気持ちにシンクロしているので、言葉にならない辛さと悲しみにより、私自身とても心が重かった記憶があります。
でも今は、彼女を見守るような気持ちで、私も毎週放送を楽しみにしています。
ここまでのヴァイオレットの成長を見届けて下さっている皆さんには、どうか最後まで、彼女に寄り添っていてあげてほしいです。
ヴァイオレットに再び笑顔が訪れることを、私も切に願っています。

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:小川太一 
    演出:小川太一 
    作画監督:丸木宣明

マグノリア家の屋敷につながる白樺の一本道を、大きなお人形が日傘を差して歩いて来た。
冬の初め、屋敷にやって来た自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。

マグノリア家の一人娘・アンは、好奇心旺盛でお母さんが大好きな女の子。
けれど、最近は気分が晴れない。
母の体調が芳しくない上に、訪ねて来る客が後を絶たない。
一緒におままごとをすることも、本を読むことも、虫を捕まえることもできない。
手紙を書くために母が招いたという「お人形」も、きっと私から母を奪う存在に違いない。

それから、母はヴァイオレットと二人きりでアンに内緒の手紙を書き始めた。
母に近づけないアンの心には、ますます不安が募る。

アンは、誰に宛てたものかもわからない手紙を書くより、少しでも自分と一緒にいて欲しいと願う。
それが叶わないのなら、「せめて手紙を書いている側でお母さんの手を握らせて欲しい」
だって、もう母に残された時間がないことを知っているから……。

それすらも許されず、胸が張り裂けそうになるアン。
わがままを言って、母を悲しませたいわけではないのに、涙が止まらない。
「手紙なんて届かなくていい」と泣きじゃくるアンに、ヴァイオレットは優しく告げる。
「届かなくていい手紙なんて、ないのですよ」
そう言って、ヴァイオレットはアンをそっと抱きしめた。

ヴァイオレットが屋敷を去る日。アンはヴァイオレットのあたたかな頬に小さなキスをした。
その時、ヴァイオレットが「お人形」ではなかったと知るアン。
ヴァイオレットは、愛らしいアンに優しく微笑みかけた。

ヴァイオレットがアンに内緒で代筆した手紙。
それは、50年間にわたってアンの誕生日に届く、母からの手紙だった。
将来、母が亡き後もアンは手紙によって、母の愛情を受けて育つ。

遠く離れたところにいる、母に見守られながら。

10話の演出を担当させていただきました小川太一です。
今回は、アンという幼い女の子と、その母親の物語。
前回までの大きなターニングポイントを迎えつつその後ヴァイオレットがどう変わっていくのかを描いていく最初の話数でもあります。
ヴァイオレットエヴァーガーデンという作品は、自分にとって、いろいろな面で初挑戦な作品です。
それは世界観だったり、時代感だったりですが、一番は、人の生死に向かい合う作品だという部分です。
そして、そんな作品だからこそ描けるものがあり、それこそがこの作品の大きな魅力の一つだと思います。
それは、だれのこころの中にもある茶化せない部分、感情、欲求。
ひいては、「愛」と表現される感情群…。
そして、それらを茶化す皮肉を持たない真っ白なヴァイオレットが、話数を重ね、自分の負っている傷に気づき、その痛みから派生する様々な感情のつながりを知り始めました。
そんな中、いろいろな「愛」の形に触れるヴァイオレットがどのように変わっていくのか、ヴァイオレットの心に大きな一石を投じた話数になっていると思います。

ストーリーの切なさとアンのいい子さで、涙なしにはみられない一話になっていると思います。
私も収録中何度も声が詰まってしまい、頑張って振り絞りながらお芝居しました。
見終わった時は、親子の愛情のまっすぐさと暖かさを感じられ、切ないながらも優しい気持ちになれると思います。
みなさんの大切な人を思い浮かべながら観ていただけたら嬉しいです。

時を超えて届けられる手紙。その愛に、原作を読んだ時、涙が止まりませんでした。
この愛を自分が表現できるのだろうかと不安でしたが、諸星すみれさん演じる素晴らしいアンに引っ張ってもらい、演じ切る事が出来たと思います。
「届かなくていい手紙などない」というヴァイオレットの言葉が胸に沁みました。
手紙とは言葉で、言葉とは想いである。言葉が、想いが、届くように。精一杯演じました。
観てくださった皆さんの心に、何かが届きますように。

  • 脚本:浦畑達彦 
    絵コンテ:北之原孝將 
    演出:北之原孝將 
    作画監督:明見裕子、池田晶子、丸子達就

C.H郵便社に、戦場の兵士から代筆依頼が届く。
ホッジンズは依頼を断るつもりでいたが、偶然その依頼を立ち聞きしてしまうヴァイオレット。
―――戦場にも誰かに想いを伝えたい人がいる。
ヴァイオレットはホッジンズに黙って戦場へ赴いた。

クトリガル国、メナス基地。
そこは、内戦が勃発したばかりの危険地域。
たどり着くことさえも困難な場所だった。
ヴァイオレットは現地のヴァンダル郵便局の協力を得て、飛行機で基地へ向かう。

依頼主のエイダン・フィールドは、所属する部隊の出撃命令を受けて雪山の中を歩いていた。
戦争はもう終わったはずなのに、恋人のマリアと両親が待つ故郷には、まだ帰れない。
突然、鳴り響く銃声。
物陰から兵士たちを狙っていたのは、ガルダリク帝国の残党。
まるで狩りを楽しむかのように、兵士たちを次々に撃つ。
「嫌だっ……!! 死にたくないっ!! 俺はっ……帰るんだ!!」
逃げ惑うエイダンだったが、彼から散った鮮血は雪を赤く染め上げた。

凄惨たる戦地に、上空から一人の少女が降りてくる。
それは、C.H郵便社の自動手記人形ヴァイオレット・エヴァーガーデン。

ヴァイオレットは残党を振り払い、エイダンを担いで小屋に隠れ、傷の手当を施す。
だが、死期を悟ったエイダンは手紙を書いて欲しいと頼む。
自分を育ててくれた両親への感謝の手紙。
そして、故郷に残してきた幼なじみの恋人マリアへ「愛してる」と。
エイダンの言葉を指の動きで記憶するヴァイオレット。

ヴァイオレットはエイダンを看取った。
「大丈夫ですよ、旦那様。手紙は必ずお届けいたします」

夜が明け、ヴァイオレットはエイダンの故郷へ舞い降りた。
マリアとエイダンの両親は手紙を届けてくれたヴァイオレットに涙ながらに感謝を告げる。
「エイダンを帰してくれてありがとう」

本当は助けたかった。でも、助けられなかった。
やりきれない想いに、胸が締め付けられるヴァイオレット。

「もう、誰も死なせたくない」

11話の絵コンテ、演出を担当しました、北之原です。
ヴァイオレットが戦士でしかなかった時には、死が決定的な別れであることが理解できていなかったのだと思います。そもそも別れ自体の意味もそうであったかもしれません。
もともと持っていたけれど、理解出来ていなかったとも解釈しています。
エイダンが愛される人物だった、このことが重要だと考えました。
人が思いあう心を強く認識できれば、彼女の変化も確かなものになると思います。

11話の作画監督を担当しました明見です。
この話数で心惹かれたシーンは、今まで戦争の道具として無関心に人を傷つけてきたヴァイオレットが、ラストでもう誰も死なせたくないと初めて他人を思って涙を流した所です。
最初の頃の無知なヴァイオレットでは出来なかった事だと思います。
自動手記人形の仕事をしていく中で、様々な人と出会い多様な愛に触れてきたからこそ、心から溢れ出た感情ではないでしょうか。
不器用ながらも成長していく彼女を優しく見守っていきたいと思います。

人はだれでも、人生で一度は、誰かの手紙に心を動かされる瞬間があると思っています。
家族や恋人、友人、応援してくれる人。その人の文字や言葉の並べ方、自分のために選んでくれた便箋や封筒が、とてもかけがえのない、あたたかいものになる瞬間。
これは、切なさや悲しさと共に、知っているつもりになっていたかけがえのないものを、もう一度教えてくれる物語なのだと感じました。
エイダンを演じる中でただひとつ心がけたことは、まったくの悲劇にはさせないということ。
彼にとっての幸せを、ほんの僅かでも表現出来ていたのなら、僕も幸せです。近々、故郷にいる母に手紙を書こうと思いました。

  • 脚本:鈴木貴昭 
    絵コンテ:河浪栄作、山村卓也、藤田春香 
    演出:澤 真平、山村卓也
  • 作画監督:植野千世子、池田和美、門脇未来、池田晶子、丸木宣明

大陸の南北をつなぐ大陸縦断鉄道。
平和の象徴として完成したこの鉄道を使って、
ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国が、和平書簡を交わす。
C.H郵便社からは条約文書を代筆するカトレアと、その護衛のベネディクトが同行する。
和平反対派は鉄道の破壊を目論み、それを阻止するためにディートフリートの部隊が招集された。

一方ヴァイオレットは、エイダンの故郷に手紙を届けた帰り道で飛行機から不審な煙を目撃する。
それは和平反対派による破壊活動の痕跡だった。
良からぬ気配を感じ、機関車の停車場所に降り立ったヴァイオレットは、カトレアたちと遭遇する。
この時、すでに車両には敵兵が潜入していた。

ディートフリート・ブーゲンビリアは、ヴァイオレットを激しく嫌悪する。
「貴様は道具だ。俺が敵を皆殺しにしろと命じたら、平然と殺すんだろう?」
しかし、ヴァイオレットは不殺を訴え、ディートフリートが差し出した武器を拒否する。
自分の知らないヴァイオレットの姿。
ディートフリートは、その変化を認めたくなかった。

ヴァイオレットは素手で敵に応戦する。
反対派を率いるメルクロフ准将は、
ヴァイオレットが「ライデンシャフトリヒの戦闘人形」だと気づき、憎しみを露わにする。

次々とヴァイオレットに襲いかかる敵兵。
エメラルドのブローチを奪われ、敵に捕らわれてしまう。
メルクロフ准将の手中にあるブローチを見つめ、ギルベルトの瞳を思い出す。

メルクロフ准将がヴァイオレットにむかってサーベルを振り上げた瞬間、
銃を構えた男がサーベルを撃ち落とす。

それは、ディートフリートだった。

ディートフリートは、ギルベルトを守れなかったヴァイオレットのことを憎んでいた。
「お前がギルを殺したんだ。だからお前も死んでしまえ!!」
ディートフリートの言葉が胸に突き刺さるヴァイオレット。
だが、それでもはっきりと言い返す。
「少佐は、それでも生きろとおっしゃったのです」

その時、ライフル銃の弾丸が放たれ、ヴァイオレットはディートフリートの前に飛び出した――。

12話の作監を担当させて頂きました。植野です。
大切な人を想う気持ち、形は違えど人を想い合っている事を改めて見つめ直した作品でした。

作品を通して積み上げてきたものを次の最終回で感じて頂けたら幸いです。
ご視聴ありがとうございました。

手紙の代筆をしながら人の心に触れてゆく…。とっても素敵ですね。
第一話から拝見させていただいおりますが、作品の力に圧倒されています。
本当に美しい作品。繊細な描写力、表現力。そして音楽や言葉が心地よく流れる。
この世界観の中に生きていられることを、大変嬉しく思います。
ディートフリート大佐が登場する度に、ヴァイオレットちゃんに申し訳ない気持ちになりますが、彼の怒りや悲しみ、憎しみが、触れた愛によって今後どうなってゆくのか。最後まで目が離せません。
お楽しみに!

  • 脚本:吉田玲子 
    絵コンテ:石立太一 
    演出:石立太一、藤田春香 
    作画監督:角田有希、丸子達就、門脇未来、丸木宣明

ヴァイオレットは銃弾からディートフリートを守った。
不敵な笑みを浮かべ機関車から飛び降りたメルクロフ准将。
その真意に気づいたディートフリートは機関車の緊急停止を試みる。
仕掛けられた爆弾の撤去に向かうヴァイオレット。
和平反対派の思惑は彼らの手によって阻まれた。

そして、ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国の和平調印式が行われ、戦争は終わった。
ヴァイオレットたちはライデンへ帰り、いつもの仕事に戻る。

飛行機で空から手紙を届ける航空祭を前にして、
C.H郵便社には代筆の依頼人がひっきりなしに訪れていた。
代筆に追われるドールたち。
カトレアとホッジンズは、ヴァイオレットにも自分の手紙を書くように勧める。
「今のあなたが思う通りに書けばいいのよ、心のままにね」
初めて書く自分の手紙―――

そこへ、ディートフリートがヴァイオレットを訪ねて来た。
連れて行かれたのは、ライデンのブーゲンビリア邸。
ヴァイオレットは、そこで初めてギルベルトの母親であるブーゲンビリア夫人と対面する。
息子を心から愛している夫人は、ヴァイオレットに語りかける。
「あの子は、生きてる。心の中で。だから決して忘れない。
思い出す度につらくても、ずっと想って生きていくわ。だって、今も愛しているんだもの」
「はい」―――。夫人の言葉に、ヴァイオレットは強くうなずいた。

航空祭当日。
たくさんの想いがつまった手紙は、空から風に乗って大陸中へ旅立った。
ヴァイオレットも手紙を書いて空から飛ばす。
「親愛なるギルベルト少佐――」
その手紙が届くと信じて――。

C.H郵便社に依頼をすれば、大陸のどこへでも彼女はやって来る。
水色の日傘を差して、エメラルドのブローチをつけた、義手の自動手記人形が。

「お客様がお望みなら、どこでも駆けつけます。
自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」

13話コンテ・演出担当しました。石立です。

ヴァイオレットの瞳に映るその世界は、初めから輝いていて、その事にヴァイオレット自身が気づけたのでは無いかと思います。
感じ、知り、思い、人の世界は広がっていき、良い事ばかりではないですが、それでも美しいこの世界を、美しいと思える様になったヴァイオレットを通して、自分のことの様に嬉しく思える。
そんな作品になっていたらいいなと思います。

本当に、ここまでお付き合い頂きまして、
本当に、ありがとうございます。

無垢さとはなんだろう、感情がわからないとはどういうことだろう…
出演が決まってからこの1年、常にヴァイオレットのことを考えていました。
あまりに人間離れしていたヴァイオレット。でも不思議と、マイク前に立つと迷いなく演じられ、彼女と一緒に自分も成長していくような感覚がありました。

物語と絵に心を鷲掴みにされ、これ程までに「この役は絶対私が演じる!」と強く願ったのは、初めてでした。
そんな彼女を演じられて、とても幸せです。最後までヴァイオレットの成長を見守って下さり、本当にありがとうございました。
また、ヴァイオレットとして皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。
お客様がお望みならどこでも駆けつけます!