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アンシェネ
世界観設定:鈴木貴昭
物語の舞台となるテルシス大陸、その南西部は大部分が比較的平たんな地形で、夏涼しく冬暖かく、年間の温度差が少なく、気候が比較的安定して住みやすい地域である。
同地域の最大の国家が、「テルシスのパン籠」とも呼ばれる一大農業国アンシェル王国で、西と南は海、北はドロッセル王国とゲネトリクス国、東はブランスル国とアイデフィカ国と隣接している。国の東側に位置する王都アンシェネは、南方に海に通じる大河があり、南方一の大国であるライデンシャフトリヒと鉄道も通じ、また周辺諸国の交通網が集中する要衝であった。大陸の南北が争った先の大戦では、南西諸国は兵を送るまではしなかったものの、経済的結びつきが強いライデンシャフトリヒを盟主とした南部側に立っていた。主戦場となったのは聖地インテンス周辺の大陸中心部、次いで大陸東部であり、西部戦線は他の戦線に比べれば平穏であった。更にアンシェル王国と戦場との間には他の国家が存在し、軍隊が国境を固めはしたものの、国内は安全地域として認識されていた。しかもアンシェネには長い歴史を誇る医学校があり、医者の数も多かったので、最前線で負傷した兵士が後送されて療養する拠点ともなっていた。 -
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テルシス大陸とライデンシャフトリヒ
世界観設定:鈴木貴昭
東西に広い長円形をした大陸テルシス、その南方中央部にライデンシャフトリヒは位置している。気候的には夏は高温多湿で冬は温暖少雨のため、農業の生産性も高く、特に豊富な水資源を生かして米を中心とした多毛作が行われている。大陸南岸は海流が強いが、ライデンシャフトリヒ周辺は広大な湾が形成されており、天然の良港が多く、南方大陸との交易の中心になっている。
また、南方からの産物のみならず、国内で豊富に産出する鉄や銅、石炭などの天然資源を輸送するために鉄道を積極的に整備、周辺諸国にまで伸びている。こうした資源を生かして積極的に工業化を推し進め、鉄道網の構築に加え、近代的な陸海軍を整備した。というのも、昔からライデンシャフトリヒはその港と資源を狙って周辺諸国から繰り返し侵攻を受け、時には大敗を喫し、首都にまで敵軍が侵攻したこともあったためである。こうした経験から、首都ライデンは二重の長大かつ堅固な城壁で囲まれ、また国境近辺には即応戦力として独自の軍事力を有した辺境伯が配置され、国土の防衛に努めていた。だが辺境伯やその周辺の地方貴族が国の防衛の中核になるにつれ、国内での発言力は強くなり、逆に中央の王権は弱体化した。結果的に現在の政体は貴族院を中心とした議院内閣制で、王家も貴族家の一つとなっている。ただ、先の大戦は大陸全土を巻き込んだ大規模なもので、それまでの貴族の常備軍では対応が難しく、急きょ組織した国民軍が活躍したことで、民衆への参政権が検討されるようになった。同時に女性の社会進出が急速に進んで行った。戦後、社会進出が進んだ女性の憧れの職業、その一つが自動手記人形である。 -
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ライデン
世界観設定:鈴木貴昭
資源と作物が豊富なテルシス大陸南部諸国に対し、北部諸国が電撃的に仕掛けた戦争は、北部諸国の思惑とは裏腹に、大陸全土を巻き込む大規模かつ長期に渡ることになった。そのため、各国とも総動員体制に突入し、国家経済を担う労働力が大幅に減少する。それを補うために女性の動員が行われ、当初は志願者による書類仕事が中心だった。軍隊は官僚組織であり、円滑な運営には大量の書類が必要で、それを処理する任務に就いていた。しかし、書類仕事が必要なのは軍隊だけではなく他の官公庁や、民間企業も同じであり、どこも男性が不足したことで、次々と女性の採用が行われた。
戦争が長引くにつれ、女性の社会進出は増加したが、高等教育を受けた人材は引く手あまたであり、書類仕事の増加に従って軍の中で教育を行う必要が生じた。その結果として、各地から(主に年配女性の)優秀な教師が集められ、軍施設の中にタイピングや書類仕事の即席教育を行う設備が作られる。当初は6週間の教育が行われたが、すぐに4週間、次いで2週間に短縮されなければならないほど、各所から人材を求める声が大きくなった。だが戦争が終結し、兵士たちが復員してくると女性の動員は徐々に解除されることとなる。それでも復興事業だけでも莫大な業務があり、また復員のための書類仕事も大量で、手に職を付けた女性たちは随所で必要とされた。結果的に、軍の教育施設は民間へと払い下げられ、政府の郵政事業の民間委託と相まって、ドール養成学校へと姿を変える事となった。 -
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カザリ
世界観設定:鈴木貴昭
ライデンシャフトリヒ国内は鉄道網が張り巡らされ、国外に繋がる主要鉄路以外にも、小規模な国内線も多数存在していた。ライデンシャフトリヒ北東部にある山間の農村であるカザリも、重要な米の産地であったため、その輸送のために鉄道が結ばれている。
カザリは川に削られた細長い舌状台地に位置し、国内でも有数の雨の多い地域であるので、年間を通じて豊富な水の供給が行われ、また気温の変化があまり大きくない事もあって、水耕農作、特に川沿いの棚田による稲作が活発である。二毛作どころか三毛作が行われる地域もあり、連作障害も少ないので、その生産性は小麦に比べて圧倒的に高く、ライデンシャフトリヒに米粉による麺文化が発達する一因となった。また高温多湿なライデン市に比べると過ごしやすい気候で、また素朴だが風光明媚な景観は、避暑地として一部富裕層に人気である。 -
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ドロッセルとフリューゲル
世界観設定:鈴木貴昭
ドロッセル王国とフリューゲル王国は、大陸中央部から西に流れるテミス大河の両岸にある国である。ドロッセルは大河をまたいで南北に国土が広がっているが、北と東の一部がフリューゲルに食い込んでおり、東の残りはゲネトリクス、南はアンシェル王国に接している。フリューゲルに半分包まれたような小国のドロッセルに対し、フリューゲルは広大な国土の大部分が森林で、南でドロッセルとゲネトリクスに接し、西は海に続いている。
国土が狭く大国に挟まれたドロッセルは、周辺諸国と婚姻政策で縁を結び、それらの庇護を得て国を維持して来た。また積極的に芸術振興を行い、都市自体を美しい建物で飾り、多くの花、特に国の花である白椿に囲まれた観光都市とのイメージを作り上げて来た。それに対して、フリューゲルは質実剛健を売りとして、広大な森林資源を生かした林業が主要産業であった。また両国の間にあるテミス大河は、伝統的に大陸の北部と南部を分ける境界線で、先の大戦でもフリューゲルは消極的な北部同盟、ドロッセルは消極的な南部連合の一因となり、直接の交戦は無かったが国境は封鎖された。幸い両国まで戦火は及ばないで大戦は終結したが、一時期は両国の関係は極めて悪化していた。 -
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シャヘル天文本部
世界観設定:鈴木貴昭
大陸南西部に位置するアストレア国、その国土の中央は、大陸中央山地から南西へと伸びる山脈で緩やかに穿たれている。ほぼ国の中心に位置する天文都市ユースティティアは、過去に海運王であるシャヘルが自分の道楽で作り上げた天文台と、それに付随する各種天文研究施設を維持するためだけに存在している。アストレア国自体は山脈の南北に豊かな平野があったため、わざわざ不便な山脈部に住む住人はほとんどいなかった。それに目を付けたシャヘルが、広大な土地を購入し、天文台が作られても光害が及ばないようにした。そのため、現在でも天文台周辺には他の都市は一切存在しない。首都からユースティティア近隣まで専用の鉄道が敷設され、そこから天文台までは大陸史上初の一般運用となったロープウェイで移動する。
同地では、天文に関するあらゆる研究と観測が行われているが、天文本部で有名なのが古今東西のあらゆる天文に関する書籍コレクションである。しかもただ収集するだけではなく、古文書の原本を保存しつつ、内容を現代語に翻訳して研究者に公開する仕事も行われている。都市自体の運営は国に移管されたが、天文台は現在でもシャヘル財閥によって運営され、同時に蔵書も全世界から集められ続けている。 -
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オスカーの家
世界観設定:鈴木貴昭
大陸南西部、テミス大河南岸に位置した国ゲネトリクス。東はヒンシュトリッヒ、南はアストレアとブランスル、西はアンシェルとドロッセル、北は川を挟んでフリューゲルと接している。
国土の大部分は平野だが、南部は中央山地から伸びた山脈の端によって、比較的高い山が存在する。その山の麓にあるのが、避暑地として知られるロズウェルの街である。春に咲き誇る花、夏でも涼しい気候、この周辺では珍しい落葉樹林による美しい紅葉、豊かな雪、どこまでも広がる田園風景と言うように、美しい四季と自然に溢れ、隣国のドロッセルと共に観光地としても有名である。それもあって、国内のみならず近隣諸国の富裕層が別荘地として活用している。都市部は観光最優先で、景観条例によって美しい街並みが保護されており、別荘も高級感を演出するために、各々が遠く離れるように建てられている。その町はずれにあるのが、大陸中に名を轟かせた戯曲家オスカーの別荘である。 -
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ボチアッチャ
世界観設定:鈴木貴昭
テルシス大陸中央部に位置している国家ボチアッチャは、南がライデンシャフトリヒに、北がサルベルト聖国に隣接している。ライデンシャフトリヒは南部連合の盟主で、隣国ボチアッチャに各種資源や食料を輸出していた。それに対してサルベルト聖国は、ボチアッチャの西にある聖地インテンスの併合を主張し、ボチアッチャに何度となく圧力をかけていた。
ボチアッチャ政府としては南部連合への加盟を望んだが、ライデンシャフトリヒ側としても下手に同盟を結ぶと、サルベルト聖国との関係が悪化するのを懸念し、通商条約を締結することで経済的な支援を継続的に行い、またどこかから攻められた際は独立を維持するために軍隊を派遣することにした。但し、周辺諸国を刺激するのを恐れ、ボチアッチャとしては表向きはどちらの勢力にも属さず、中立を宣言していた。だが、ガルダリク帝国とサルベルト聖国が同盟を結び、南部連合諸国に宣戦布告、サルベルト聖国に集められた主力軍はボチアッチャに対し電撃的な侵攻を行った。これに対しボチアッチャは南部連合に条約に従っての救援を要請、ライデンシャフトリヒ側も直ちに国境付近の軍を、ボチアッチャの首都カプリアに向けて軍隊を移動させた。そのまま、カプリア周辺に構築してあった防衛網に籠ったが、同時にガルダリク帝国軍も南下を開始し、北部同盟と南部連合の本格的な大戦が勃発した。 -
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インテンス
世界観設定:鈴木貴昭
テルシス大陸を東西に貫く山脈と、北から南へと伸びる山脈は大陸のほぼ中央部で一つに交わっている。この地は、周辺のどこから見ても世界の背骨のように見えたため、古い創世神話では大地母神が横たわって大陸が作られた際に、その背骨だと考えられた。また大陸各地に伸びる河川の多くの水源地となっており、そこからも大地に豊穣をもたらす源だと考えられていた。更にほぼ中央部に大陸最高峰の山があることからも、古来から信仰の地となっていて、いつしか大陸のほとんどの宗教の聖地となっていった。
最高峰の山を望む地に巡礼都市インテンスが作られ、近隣の土地を含めて一つの国となったが、あくまでも全世界に開かれた聖地で、どこの勢力にも属さない中立であろうとした。だが、宗教国家であるサルベルト聖国は、インテンスが他国であるのが許容できず、何度となく侵攻を企てていた。そのため、食料や資源が不足しがちで南方への進出の機会を狙っていたガルダリク帝国と結託、周辺諸国も巻き込んで北部同盟を結成し、南部連合へと宣戦布告した。ガルダリク帝国側は山岳地帯であるインテンスは迂回し、一挙にライデンシャフトリヒへなだれ込んで占領するのを主張したが、サルベルト聖国はあくまでもインテンスの占領を第一目標としたため、山岳地帯を移動せざるを得なかった軍隊の進撃速度は低下し、南部連合が防衛網を構築する時間を与えてしまった。更に北部同盟の主力軍はインテンスを占領したものの、サルベルト聖国軍はそれ以上の進撃を停止したことで、戦線は更に膠着した。 -
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アンの家
世界観設定:鈴木貴昭
アンの家は、テルシス大陸南東部にあるレッヘルント国のほぼ中央部に位置している。同国は北はボチアッチャとサルベルト聖国、南にラレンタンド、西にヴィヴァーチェと隣接し、ボチアッチャやラレンタンドと共に中立を宣言している国家群の一つである。また、国の東に大陸最大の湖があり、サルベルト聖国との国境は山脈であったのと、サルベルト聖国がインテンス侵攻を主目的としたため、先の大戦ではボチアッチャとは違い、直接的な戦場にはならなかった。だが、軍隊をボチアッチャに派遣し、被害を受けている。
気候は温暖で、土地も肥沃であり、湖のお陰で水資源にも恵まれているので農業生産性は高い。ただ、平坦な丘陵地が連なる土地の割には人口はあまり多くなく、国全体が農村地域のような素朴な風景が広がっている。また戦争の際に最終的に南部連合側に立ったので、ライデンシャフトリヒなどとの貿易も活発化し始め、色々な物資が流入するようになってきた。 -
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クトリガル国メナス基地
世界観設定:鈴木貴昭
テルシス大陸最北の国家で、国土の大部分が亜寒帯にあるので、全体に寒冷。しかし、夏には農業生産が可能な程度に温度が上がるので、人も住んでいる。更に、北部同盟諸国の中では地下資源に恵まれているので、周辺諸国にそれを輸出することで、住民の生活水準は比較的高く保たれている。だがそれが周辺諸国との軋轢を生んでおり、水面下ではクトリガル国を快く思っていない国も少なくない。
また大陸戦争の際も、資源輸出国として利益を出し続けており、国内には戦争継続を望む派閥も多かった。戦争が終了して南部から豊富で安価な資源が輸入されると自国の利益が激減するため、戦争継続派が活動を続け、和平を受け入れた政府に対して内戦を仕掛けた。これに対して、周辺諸国は治安のためと称して共同出兵を行い、ソルバス共和国からはクトリガル南東端で国境沿いに位置しているメナス基地へ部隊を駐留させた。メナス基地の近くには主戦派の収容所があり、本来はそこの監視任務が主であったため、それほど多くの部隊はいなかった。 -
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ライデン港からディスタリィ駅
世界観設定:鈴木貴昭
ライデンシャフトリヒのほぼ中央部は、インテンスを源流とする大河が南のライデン湾に向かって流れており、これが同国の肥沃な土地を作りあげた。またこの川は早くからインテンス巡礼の主要ルートの一つとなり、舟運が盛んであった。そのため、インテンス巡礼の窓口として発展したディスタリィの町まで運河が掘削され、ライデン港で川船に乗った巡礼者がディスタリィまでそのまま行けるようになったことは、世界各国からの巡礼者を増やすのに一役買った。
川に沿って道も作られ、後に鉄道も敷設された。しかし大陸戦争でメヒティッヒの町が陥落し、その際に鉄橋が破壊されたため、ディスタリィまでの鉄道は途絶した。一時期運河も通行が困難となり、西側のオーバーベルグ国から大回りして物資を運ぶ必要が生じ、東部戦線への補給が滞ったことで、ライデンシャフトリヒは苦戦する。だが、メヒティッヒ奪還作戦の成功で一挙に戦況は好転した。ディスタリィはその際や、その後のインテンス奪還作戦でも重要な物資集積拠点として活用され、鉄道駅の整備が進んだ。それもあって南北和平の特使を送る鉄道も、ディスタリィ駅から出発した。 -
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グランデッツァ
世界観設定:鈴木貴昭
ガルダリク帝国の南に位置しているアンクリューム国は、その位置関係から政治経済的に、ガルダリク帝国の影響力を強く受けていた。だが、同国は南部諸国との窓口でもあり、そちらとの交流も続けていた。ライデンシャフトリヒを中心とする大陸縦断鉄道構想をガルダリク帝国が受け入れたことで、自国内に鉄道を通すのを承諾する。
インテンス山脈が国土の大部分を占めている同国は平地が少なく、距離は大幅に長くなるが平地の多いゲネトリクス~フリューゲル王国経由の方が工事は容易であったが、その場合アンクリュームが南北の窓口である地位を失うため、表向きはしぶしぶ、実際は積極的に工事を承諾した。また、アンクリューム国としても、北部の首都アントレーンと第二の都市ケス・クレールの間は山脈が通っていて、国が分断されているのを鉄道によって解消したいと考えていた。この工事の最大の難所が、山脈を貫く大トンネルと、ケス・クレールとトンネルの間に横たわるグランデッツァ渓谷を渡る鉄橋の建築であった。戦争中工事は中断されたが、それを除いても15年の歳月と莫大な工費が投入され、南北和平の象徴として、各国の工兵部隊の協力もあって急ピッチで工事が再開されて開通にこぎつけている。